今回は堆積岩グループに属する生物岩(石灰岩)グループの性質を記載します。
<参考:岩石の分類はこちら

【生物岩(石灰岩)の性質】
①生物岩(石灰岩)の代表的な岩石
石灰岩

②初生的な基本性
 ※風化、変質、構造運動による破砕(断層)などによる岩盤劣化がない場合の特徴

硬さ:非常に硬い

割れ目の量:多い

透水性:基本的に低い
※空洞部は高透水


③割れ目の連続性と岩盤劣化の特徴

割れ目の連続性:
層理面の方向によってはゆるみが生じやすい。砕屑岩グループ(泥岩など)や生物岩(チャート)などと産出することが多く、たとえば流れ盤(斜面に斜面と同じ方向の層理面が見える)の斜面は地すべりや崩壊が生じやすい。

風化:
比較的風化しにくい。

ゆるみ:
ゆるみにくい。

断層:
普遍的に存在する。層理面が断層になっていることもある(層面断層)。

変質:
割れ目に沿って軟質になっていることがある。

※備考※
・岩盤の劣化についての概説はこちらをご覧ください。
・続成作用”弱”の生物岩(石灰岩)は空洞ができやすいという特殊な性質をもつ。石灰岩はコンクリートの原料にもなるアルカリ性の岩石で、酸性にさらされると溶けます。溶食(岩石が溶けること)は地表や割れ目から徐々に進行し、空洞に発展していきます。鍾乳洞はこの空洞の最たるもので、石灰岩の分布地域には鍾乳洞がよくあります。


【分布】
生物岩(石灰岩)のおおまかな分布図(GSJ, AIST、20万分の1日本シームレス地質図より引用)
詳細に見たい方はこちら
砕屑岩(古第三紀以前)

地質図の表示は続成作用”強”の砕屑岩グループの分布を示していますが、このなかで鮮やかな青色で着色された部分が石灰岩です。また、日本の石灰岩は付加体に分布する傾向があるため、続成作用”強”の堆積岩と分布がかぶることが多いです。


【生物岩(石灰岩)を基盤岩とするダムの例(形式・堤高)】
  • 河本ダム(中空重力式コンクリート・60m)
など

【雑記】
生物岩(石灰岩)は、岩石強度自体に問題はないが、空洞があるかもしれないという致命的な欠点をもちます
空洞は漏水の原因になるし、簡単に改良できないと予想されるため、石灰岩が広く分布する場所にダムは不適と言わざるを得ないです。

石灰岩のでき方について少し説明すると、石灰岩は堆積岩の一種で、定義としては方解石、あられ石など、炭酸カルシウム (CaCO₃) を50重量%以上含むものを指します。
サンゴや貝殻など生物遺骸が生成される環境あったり、蒸発などによって炭酸カルシウムが沈殿したりして、炭酸カルシウム分が海底に堆積し、長い年月をかけて続成作用を受け、岩石化することによって形成されます。
日本に産出する石灰岩は、ほとんどが”付加体”であり、高い圧力を受けてカチカチ、バキバキになっています。
そのぶん、岩石の密度が高く、高品質な鉱物資源として採取されているのだと思います。
石灰岩の分布域にはダムじゃなくて石灰鉱山がよくある。

ちなみに石灰岩がさらに熱による変成を受けると大理石になります。

石灰岩‗産総研
↑石灰岩が作るカルスト地形。地下には大空洞があるかも?※産総研HPより引用

コンクリートの原料は石灰岩なのに、基礎岩盤が石灰岩では困る。
モノは使いようですね。